ある紅茶専門店の閉店と、SNSとの関係性について
1月の末、都内のある紅茶専門店が閉店を迎えてしまいました。こう言ってしまうとどの紅茶専門店かがすぐにわかってしまうのですが、まぁこの際いいでしょう。
このお店は私の家からはそれなりに距離があり、なかなか行けるところではありませんでしたが、紅茶の美味しさと何よりもクオリティの高いお茶菓子のためにたまに行っていたお店ではありました。
常連さんの多いお店ではあったものの、お茶菓子の美味しさから口コミが広まり、一見の方々もよく来られるお店だったように記憶しています。雰囲気もよく紅茶、お茶菓子のクオリティも高く、とてもいいお店でした。
この紅茶専門店の閉店の話を聞いたのは1月中旬頃、ある別の紅茶専門店で「○○さんが閉店するらしい」という話を聞いたことが始まりでした。そこから色々と情報を調べてみたところ、閉店自体は紛れもない事実であることがわかりました。そして、その情報の中には閉店に至る理由などが多々散りばめられていましたので、調べていて私が感じたことを。
※いろいろなことが飛び飛びになっていたりするので、若干読みづらいかもです。その点ご承知おきを。
Instagramの餌食となった紅茶専門店
「あの店はInstagramの餌食となったのだ」
ある人とこの話をした時のまとめのような一言がこれでした。一言でざっくり言いすぎて雑な気がしますが、この発言はかなり的を射ているのは確かです。
この紅茶専門店は紅茶よりも綺麗に飾られたスイーツ、アフタヌーンティーセットがウリでした。紅茶もそうですが、アフタヌーンティーセットは何よりInstagramによく映えます。それが注目されてか、スイーツよりも紅茶よりもSNSへアップロードを求めるために来られる客が多くなったと風の噂で聞いたことがあります。
調べていると、スイーツだけ堪能し、紅茶を残される方がいるとも書かれていました。紅茶好きとしては心苦しい話ではありますし、紅茶に拘りをもっている店主はもっとショックでしょう。
彼ら、彼女達が求めるのは紅茶ではなくスイーツでありSNSにおける承認欲求です。そんな彼らの餌食となってしまい、心身ともに疲弊してしまったのは調べていて容易にわかりました。
経営者の品格とTwitterの発言
調べていた時に同様にわかったのが、そのお店の運営に対して店の中で意見が分かれていたことでした。それだけであれば「方向性の違い」などという言葉で片付けてもよさそうですが、これが『Twitterという白昼堂々の世界で行われていた』ことが大変問題であったように感じました。
Twitterでは店に来られるお客さんに対してや運営に対する愚痴の数々が書かれていました。これを見て、言いたいことはわかるがこれをそのまま開示するのはさすがにマズいだろうと思いました。この点については数々の紅茶好きの方や紅茶専門店の方などにも「これはヤバいでしょう」と言わせるほどでした。
愚痴を言いたいことはわかりますが、Twitterはチラシの裏ではなくスピーカーでそのあたりに自分の言いたいことを喚き散らすことと何ら変わらないです。経営者として、お店の人間としての品格を感じた瞬間であり、かつ「確かに閉店しても仕方ないなぁ」と色々な方をガッカリさせることに繋がったと言えます。
拘りすぎて、妥協点を見い出せなかった店主
紅茶専門店の運営について色々な人にお話を聞くことがあるのですが、運営にはそれぞれのお店のオリジナリティと妥協点を持って行っているそうです。ある人は価格、ある人は提供できる品数と自分の妥協できるポイントとそうでないポイントを見極めているそうです。
そしてもうひとつ重要なのが、「紅茶専門店」であることを忘れないという点です。
このお店は色とりどりでSNSによく映る、見た目も味もクオリティの高いスイーツがメインとなっていました。紅茶専門店であったのにです。私としては個人店とホテルのアフタヌーンティーのちょうど中間を狙うような位置にいて面白いお店だなぁとも思っていたのですが、どうやらこれが逆効果だったようです。
Twitterでは「紅茶専門店だから紅茶にも拘って提供している」ということを書かれているように見えましたが、あくまで来る客としては「紅茶ではなくスイーツがメイン」となっていたようです。
もちろんそれが悪いことではありません。叶うならばこのクオリティを維持してお店をずっと運営していただきたかったという気持ちが強いです。ただし経営状況として妥協点がなかったように私には映りました。人を増やす、提供のクオリティを下げる、予約制にするなど色々な方法が考えられたのに……。
こういうお店が増えないように……
今回取り上げた紅茶専門店が閉店した理由として、SNSをはじめとしたインターネットの影響が少なくないように感じました。そしてそれが自分たちの運営の現状に沿っておらず、店としての方針変換が出来ないと、今回と同様のことが起きてもおかしくありません。
また、SNSが蔓延することでいい情報だけでなく、あまり目に入れたくない情報も飛び込んで来ることも確かです。誰がどこで何をみているかわからないこのご時世、発信者、受信者ともに情報の取扱方には注意を払うことを改めて思い知りました。
私としては、今回と同様のケースで心身を病んでしまい、閉店を辞さない店が出てこないことを祈りたいところです。また、このお店についてはいつかどこかで改めてお店を開いて頂いたり、紅茶の世界で色々なお仕事がして頂くことを切に願っています。