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たかみめも

アニメ、ゲームの話や紅茶の話など、日々気になったことをだらだら書いてます

「君の名は。」や「名探偵コナン 純黒の悪夢」からみた、深夜アニメ劇場版の興行収入の限界

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「君の名は。」の観客動員が1,000万人、興行収入が130億円を超えたという記事を見ました。何度も見ている人がいるとはいえ、それでも数100万人の人がこの作品を見ているという点、ジブリやディズニー、PIXER作品を除いた作品ではアニメ作品の興行収入が1位と社会現象と呼ぶに相応しい作品になったのではと思っています。

「君の名は。」観客動員1000万人、興行収入130億円突破 10月14日の新聞広告に新ビジュアルが掲載 - ねとらぼ

 

また、「名探偵コナン 純黒の悪夢」も興行収入が60億円を突破し、今までのコナン作品の中でブッチギリだったことも記憶に新しいです。

『名探偵コナン 純黒の悪夢』興行収入はシリーズ最高の60億到達 | アニメイトタイムズ

 

以前にこのブログでは以下のような記事を書きました。ガールスアンドパンツァー(ガルパン)の興行収入が20億円を突破した辺りで書いた記事です。この記事ではガルパンとその他深夜アニメの劇場版の興行収入の伸び方を比較検討したものです。

 

ガルパンの興行収入と比較対象の映画との違いについて - たかみめも

 

この記事では主に深夜アニメにおける作品群を取り扱ったのですが、先に挙げた2つの作品は深夜アニメトップクラスの興行収入となっているガルパンなどの作品を遥かに上回る興行収入をあげていることがわかります。

前置きは長くなりましたが、ここでは「君の名は。」や「名探偵コナン 純黒の悪夢」といった作品やディズニー作品、そして深夜アニメ劇場版との興行収入の差を見ていきたいと思っています。

※そのため、この記事では「各映画がどう面白いか」といった話はほぼありません。

※後々見返したら、「エヴァシリーズ」を検討材料に入れ忘れていました。グラフへの追記は後でやります。特記事項などもあれば追記します。

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様々な世代層、特に若年層の取り入れに成功した「君の名は。」

様々なメディアに取り上げられ、RADWIMPSの力も借り、気づいたら興行収入が100億円を超えた「君の名は。」。この作品がここまで流った理由については、様々なメディアミックス、RADWIMPSによる音楽の力などといった様々な要因があったような気がしています。

 

新海監督も以下の記事でこう言っています。たまたまヒットしたけれども、狙っていた層に届いたことは確かです。一部の擦れたオタクがブーブー言っているのを尻目に、新海監督の『若年層をアニメ映画に取りこもうとした』戦略が成功した形だと思います。

今回がたまたまであっても、これからは「あっ、新海監督の作品だ」と認識されることは間違いないです。今後若年層が新海監督の作品を楽しむことが増えることが期待されます。

 

今回の作品がヒットしているのは「たまたまだ」という感覚が強いからです。若い人たちが求めている巨大な需要のような穴があって、そこにこの作品が良いタイミングでうまく入り込んだ。本当に幸運が重なった結果だと思うのです。

 

『君の名は。』大ヒットの理由を新海誠監督が自ら読み解く(上) 新海誠・映画『君の名は。』監督インタビュー|『週刊ダイヤモンド』特別レポート|ダイヤモンド・オンライン

 

考えていたのは、往年の映画好きの方々に見てもらって満足してもらうような、形の良さや完成度の高さを目指すよりも、10代、20代の若い観客に向かって、フレッシュに見えるものにしたいということでした。

 

『君の名は。』大ヒットの理由を新海誠監督が自ら読み解く(下) 新海誠・映画『君の名は。』監督インタビュー|『週刊ダイヤモンド』特別レポート|ダイヤモンド・オンライン

 

かのスタジオジブリも「もののけ姫」の頃からメディア戦略を大々的に行った結果、興行収入193億円という偉業を成し遂げました。今回の「君の名は。」についてもメディア戦略を今まで以上に力を入れた結果ではないかなと思っています。

またジブリについては、魔女の宅急便の頃に興行収入がぐっと上がっていますが、これは「日本テレビがスポンサーになったから」と言われています。メディアによる宣伝の効果の大きさがよくわかります。

 

ジブリ作品の流れが明らかに変わったのは「もののけ姫」からです。プロデューサーに鈴木敏夫氏を据え、企画、宣伝、興行全てにおいて鈴木プロデューサーが取り仕切り、徹底的なメディア戦略を行ったそうです。

それまでは、アニメ=子どもが見るものといった図式を「大人でも楽しんでみることができるエンターテイメント」としてメディア戦略を展開したことで、その認識が周知されたと言えるでしょう。

 

ジブリ作品興行収入一覧と興行収入推移グラフを見てみる

 

「10代、20代の若者」というより大きな視聴者層を選択したこと、そこに適したメディアアプローチを取ったことが「君の名は。」の成功ではないかと思っています。他で語られている通り、解散したジブリのベテランアニメーターを引き入れたことによる動画面のクォリティの向上などもこの作品の成功に繋がっているのですが、これらの理由は最終的に上記の層に対する適切なアプローチによるものだと思っています。

 

※余談ですが、「アニメ=子どもが見るものといった図式」というのは実際のところ間違いで、もともと細分化されているということがわかっています。

参考:私が感じた「大人が見ても面白いアニメxx選」への違和感とアニメのターゲット層 - たかみめも 『ターゲット層という考えと個人的な結論 』

 

あとは、こんなツイートを見かけたので紹介を。東宝の宣伝戦略として、「劇場予告を流す」ことの反応が思っている以上によかったそうです。どの程度効果があったのかという定量的な面はわからないのですが、コナン視聴層をうまく「君の名は。」へ誘導するような戦略だったようにも感じます。

 

腐女子界隈に衝撃を与えた「名探偵コナン 純黒の悪夢」

過去の興行収入としては、20~30億円、ここ数年でも40億円あたりを推移していました劇場版名探偵コナンシリーズ。今作品では過去最高であった「業火の向日葵」の約1.5倍の興行収入である63.0億円となりました。

 

表 名探偵コナン劇場版 公開日と興行収入の一覧

 作品名公開日興行収入
第1作 時計じかけの摩天楼 1997年4月19日 11.0億円
第2作 14番目の標的(ターゲット) 1998年4月18日 18.5億円
第3作 世紀末の魔術師 1999年4月17日 26.0億円
第4作 瞳の中の暗殺者 2000年4月22日 25.0億円
第5作 天国へのカウントダウン 2001年4月21日 29.0億円
第6作 ベイカー街(ストリート)の亡霊 2002年4月20日 33.8億円
第7作 迷宮の十字路(クロスロード) 2003年4月19日 32.0億円
第8作 銀翼の奇術師(マジシャン) 2004年4月17日 28.0億円
第9作 水平線上の陰謀(ストラテジー) 2005年4月 9日 21.5億円
第10作 探偵たちの鎮魂歌(レクイエム) 2006年4月15日 30.3億円
第11作 紺碧の棺(ジョリー・ロジャー) 2007年4月21日 25.3億円
第12作 戦慄の楽譜(フルスコア) 2008年4月19日 24.2億円
第13作 漆黒の追跡者(チェイサー) 2009年4月18日 35.0億円
第14作 天空の難破船(ロストシップ) 2010年4月17日 32.0億円
第15作 沈黙の15分(クォーター) 2011年4月16日 31.5億円
第16作 11人目のストライカー 2012年4月14日 32.9億円
第17作 絶海の探偵(プライベート・アイ) 2013年4月20日 36.3億円
第18作 異次元の狙撃手(スナイパー) 2014年4月19日 41.1億円
第19作 業火の向日葵(ひまわり) 2015年4月18日 44.8億円
第20作 純黒の悪夢 2016年4月16日 63.0億円

 

ここ数作品は右肩上がりだったので作品番号と興行収入をグラフにしたのがこちら。第12作あたりから右肩上がりであることがわかるが、最新作の伸び方がどう見ても異常であることがぱっとわかります。

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もともと名探偵コナン自体は若年層およびコナン好きに愛されている作品でしたが、今回の「純黒の悪夢」では、とあるカップリング*1が腐女子の間で話題となり、今までと違う層の人たちがコナン作品を見るという現象が起きました。*2

 

この腐女子という層は男性オタクと同様、気に入った作品を何度も見る人が多いため、Twitter上では「もう●●回も見た」という発言がちらほらと見かけるくらいでした。もともとコナン自体、一部の腐女子界隈ではジャンルとして定着されていましたが、今回はそれをも遥かに凌駕する勢いでジャンル化、コンテンツ化されたと見聞きしています。

この腐女子効果によるものなのか、今回の作品の興行収入の伸び方は前回までに比べて急激なものとなりました。ただし、逆を取ると『一部の腐女子パワーを使っても約20億円程度の伸びだった』と捉える事もできます。それでもオタク向け劇場版作品の中ではトップクラスではあるのですが。

 

子供向けアニメの興行収入と観客動員数

ポケットモンスターや妖怪ウォッチも過去に多くの興行収入を得た事があります。「 ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」は76億円、「映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!」が78億円と今回の劇場版コナンよりも高い興行収入を得ています。

これらの作品は『親子連れ』が多く、観客動員数の多さで興行収入を底上げしているのではないかと考えられます。またディズニー、PIXER作品も同様の現象が起きているのかなと考えました。

 

この仮説が正しいかどうかを確認するため、各アニメの観客動員数と興行収入の関係から「一人あたりの興行収入」を算出しました。今回の計算式は『興行収入 / 観客動員数』とします。対象のアニメは、ジブリから5作品、ディズニーから2作品、子供向け(ポケモン、妖怪ウォッチ)、名探偵コナンから2作品、深夜アニメから3作品と「君の名は。」と「シン・ゴジラ」としました。「シン・ゴジラ」はアニメではありませんが、トレンドとなったオタクコンテンツとして比較するために入れています。

 

なお各世代の価格ですが、一般的なケースとして「109シネマズ」のこの価格を参考に考えます。幼児から高校生まではほぼ値段は変わらないことがわかります。これ以外にもレイトショーやレディースデーなどといった割引があるので、実際には以下料金から安くはなることが多いです。

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Captured by : http://109cinemas.net/kawasaki/prices.html

 

で、結果の一覧とグラフは以下の通りでした。

「深夜アニメ > ジブリ=ディズニー > 子供向けアニメ」という感じになりました。

カテゴリ作品公開年興行収入[百万円]動員数[万人]平均単価[円]
子供向け ポケットモンスター ミューツーの逆襲 1998 780,000 700 1,114.3
妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン! 2014 760,000 650 1,169.2
ディズニー アナと雪の女王 2014 2,548,000 2,000 1,274
ファインディング・ニモ 2003 1,100,000 900 1,222.2
ジブリ 千と千尋の神隠し 2001 3,040,000 2,350 1,293.6
ハウルの動く城 2004 1,960,000 1,500 1,306.7
もののけ姫 1997 1,930,000 1,420 1,359.2
崖の上のポニョ 2008 1,550,000 1,200 1,291.7
風立ちぬ 2013 1,200,000 970 1,237.1
深夜アニメ ラブライブ! 2015 280,000 200 1,400
ガールズアンドパンツァー 2015 231,500 135 1,714.8
魔法少女まどか☆マギカ 2013 202,800 145 1,398.6
名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア) 2016 602,000 471 1,278.1
名探偵コナン 業火の向日葵 2015 414,000 331 1,250.8
その他 君の名は。 2016 1,300,000 1,000 1,300
シン・ゴジラ 2016 613,000 420 1,459.5
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グラフにしてみると「ガールズアンドパンツァー」の異常さが目につきますが、これは4DX上映(2,900円)あったことが大きな理由だと考えられます。「シン・ゴジラ」も4DX上映があるのですが、ガルパンほど4DXで見る理由もないため、そこまで平均単価が高くないのかなと思いました。

 

また、子供向けに作られたアニメであるほど平均単価は低くなっていることがわかります。やはり、親子連れで来ることが想定されるアニメほど、作品の一人あたりの平均単価は下がるのでしょうか。

ディズニー作品も子供向けに作られている作品が多く、ポケモンや妖怪ウォッチと同様に平均単価は低く出るかと思っていましたが、ディズニーやジブリ好きの大人たちがこぞって見に来るため、平均単価が少し高めに出ているように感じました。 

 

ディズニー、ジブリ作品および今回の「君の名は。」のように『色々な客層が見に来ている映画』の平均単価は大体1,250~1,300円あたりを推移していそうです。深夜アニメ劇場版はこれらの作品よりも平均単価が100円ほど高く出ており、これは若年層の取りこみの差ではないかと感じました。

 

深夜アニメ劇場版の限界

前置きが長くなりましたが、ここでようやく深夜アニメの劇場版の興行収入の限界についてです。

深夜アニメで興行収入が第1位の「ラブライブ!」の30億円。この数字が深夜アニメ劇場版のひとつの限界のように感じました。実際のところ「ラブライブ!」も「ラブライバー」を始めとした若年層のアニメ好きによって興行収入の押し上げが発生したからこその結果だと私は思っており、この先なかなかこの興行収入を超える作品は出て来ないのかなと考えています。*3

 

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名探偵コナンシリーズ20作目である「名探偵コナン 純黒の悪夢」では20億円ほどの興行収入増がありましたが、15作から19作までは右肩上がりで興行収入が上がっています。線形近似で興行収入の伸びをざっくり計算してみると、1作品ごとに約3.5億円ほどの収入増となっています。

この計算の通りだと「純黒の悪夢」の本来の興行収入は約48.5億円程度となります。この計算と実際の興行収入から、腐女子効果による興行収入の伸びは約15億円程度と考えられます。『アニメ好きの流入』によって起こる急激な興行収入増は、この程度ではないかと考えられます。

 

一方で今回の「君の名は。」は前作の「言の葉の庭」に比べて約100倍の興行収入増となっています(「言の葉の庭」の最終興行収入は推定1.5億とのこと(Wikipedia調べ)) 今までの作品でもいくつかの賞を取っており、アニメ好きの人たちにはそれなりの人気のあった新海監督作品ではありますが、それでも興行収入の面ではぱっとしませんでした。それが大多数の一般層を取り込むことによって興行収入が跳ね上がったと考えられます。

 

改めてにはなりますが、「ラブライブ!」の時の興行収入である約30億円というラインが、深夜アニメ劇場版の興行収入のひとつの限界なのかなと感じています。これ以上の興行収入を求めるのであれば、大多数の一般層を取り込むことや、劇場版コンテンツの拡充(ガルパンのような4DX上映など) を考慮する必要がありそうです。

まぁ、そもそも深夜アニメの劇場版に一般層を取り込むこと自体は厳しいと思うのですが……。

 

ヱヴァのことをすっかり忘れていた

ここまで書いていたところで、「新世紀ヱヴァンゲリヲン」のことをすっかり忘れていました。この作品は「深夜アニメ」ではないのですが、コンテンツの種類としては、深夜アニメと同じ枠に入れてもよさそうです。

この作品、「まごころを君に」が興行収入24.7億円、新劇場版シリーズだと「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」が40.0億円、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」が52.6億円という、深夜アニメ枠の中ではトップの興行収入をあげています。*4

 

で、「新劇場版:Q」の興行収入は「ラブライブ!」に比べて20億円以上高いのですが、その理由としてはやはり若年層や50代、60代といった幅広い層を劇場へ足を運ばせたことが大きいです。そういえば、劇場版上映前はローソンとのコラボや色々な企業とタイアップをしていましたし、2004年から稼働開始したパチンコシリーズの効果も色々な層の獲得に一役買ったと言ってもよさそうです。

この17年という長い期間、「エヴァ」はファンを離さず、テレビ版を知らない20代、アニメに親和性の薄い50代や60代をも巻き込み、規模を拡大し続けている。

(中略)

「Q」公開前にこのタイアップ・コラボ作戦に参加した企業は150社超。同作の商品企画・版権管理を担当するグラウンドワークスの神村靖宏氏は、「エヴァ史上最大規模」と話す。参加企業には、NTTドコモ、ANA、ロッテリア、参天製薬、ドワンゴなどの有名企業が名を連ねた。

 

世代を超えた人気 エヴァンゲリオン現象の不思議|エンタメ!|NIKKEI STYLE

 

従来のファンだけでなく、アニメやヱヴァとの親和性の薄い層をうまく取り込んだ結果がこの結果に繋がったと思っています。やはりアニメを普段から楽しんでいない層、つまり従来のファン以外の層を取り込むことが興行収入を上げるために必要な条件だと言えそうです。

 

深夜アニメも続々と劇場版が出て来るこのご時世、どっと話題になる作品が次々と出てきてほしいなと願いつつ、この記事は締めとさせていただきます。

 

☆あわせてどうぞ☆

 記事内で紹介した当ブログの別記事です。あわせてどうぞ!

ガルパンの興行収入と比較対象の映画との違いについて - たかみめも

私が感じた「大人が見ても面白いアニメxx選」への違和感とアニメのターゲット層 - たかみめも

 

 

*1:赤井秀一と安室透のカップリング

*2:個人的にはここ5作品くらいで興行収入が10億円ほど伸びている理由のほうが気になりますが、今回の話題とは違う理由だと思いますので、考察をやめました

*3:こんなことを言っておいて、数年後にはすぐひっくりかえったら恥ずかしいよなぁとは思っていますが、現状はこう思っています

*4:なお旧劇場版と近い時期に上映された「機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-」は「スレイヤーズ」とあわせて興行収入が5億円程度であり、興行収入の差の観点からみてもヱヴァ作品の当時の人気度合いがわかります