アニメのクール数の比率から見た「1クールアニメが面白くなった理由」
以前にかーずさんがTwitterで1クールのアニメが面白くなってきているという話をされていました。確かに日常系アニメを始めとして、1クールアニメが視聴のバランスやここ昨今のご時世的な観点で適しているような気はしていますが、それでも2クールアニメのほうが割と面白いものがあるんじゃないかなと思わったわけです。
そんなふとしたきっかけではありますが、まずはここ10年のアニメのクール数の傾向を調べることにしました。詳細の分析などはやりだすとキリがないので、今回はあくまでデータを並べて傾向をつかむところまでにしておきます。
今回の定義
今回の定義は以下のような感じでいきます。
1. アニメの切り分け
各年のアニメの総本数に対し、1クール、2クール、3~4クールのアニメを調べる。
アニメの総本数から以下を除外する
・ 5クール以上続いているアニメ
・ 1~3話の特別放送
分割クールのものはそれぞれを1クールとする(面倒なので)
2. データの取り方
各年のアニメの総本数、各クールの割合を出す
各クールの割合を年ごとにグラフで推移を出す
ここ10年のアニメのクール数の統計
全体の統計
特別放送や期間限定のアニメを除外はしているものの、以前にまとめた各年のアニメの本数と同様のアニメの本数の推移であることが確認できました。
以前のまとめはこちら>>原作アニメとオリジナルアニメの比率と過去からの推移 - たかみめも
2005年以前のものも調べてもよかったのですが、過去って2クールのアニメが多かったよなというイメージは2005年~2009年辺りまでを見ればよくわかります。この頃は1クールアニメと2クール以上のアニメの割合がまだ半々くらいの割合でした。
2010年以降では1クールアニメが全体のアニメ本数と同じ傾きで増えているように見えます。つまりここ最近は1クールのアニメがどんどん増えているということがこのグラフからわかります。毎回言ってはいますが、ここ最近のアニメ本数の増え方はちょっと異常です。あまり業界を理解しているわけではありませんが、資本側、製作側、視聴者の3者が総不幸な状況になっているような気がしてならないです。
割合をとってみると1クールアニメの増大が如実であることが容易にわかります。ちなみに2000年から2005年まではほぼ同様のクール数のバランスであることが確認できており、1クールアニメが増えてきているのはここ10年で顕著であることが言えます。
(ちなみに1990年代まで遡ると、1996年の1クールアニメが1本とほぼ2クール以上の放送だったと言えますが、翌年の1997年では13本に増えています。それでも全体の30%には満たしていないですが)
2クール、3~4クールのアニメ
2クールアニメの本数(棒グラフ)と全体の割合(折れ線グラフ)です。
2クールアニメは2010年を境にがくっと減っていることが折れ線グラフからわかります。2014年頃には2クールアニメの本数はある程度戻っているものの、全体のアニメの本数の割合を考えると全体の20%を切っており、10年前に比べ割合は半分程度に落ち込んでいます。
一方で2005年、2006年は2クール放送アニメが半分弱であり、予想していたよりも多いことに驚きました。もう少し前(2000年以前)は2クール以上放送されるアニメが普通だったと記憶しており、深夜アニメが台頭してくる2000年前半からかなり減っている印象でしたが、第一次アニメクライシスが起きていた2006年は本数だけでなく2クールアニメが多かったのが衝撃でした。この頃って本当に大変だったんだろうなぁ……。
3~4クールアニメの本数(棒グラフ)と全体の割合(折れ線グラフ)です。
3~4クール連続放送アニメは各年20本中心として推移しています。2015年、2016年が少ないように感じられますが、この2年に放送開始され現在も放送されているアニメは除外しているためです。
1年もののアニメはニチアサ枠、NHK枠やテレ東夕方枠などが多く、大きくアニメの本数が増減することはなさそうです。さらに1年を超えるアニメだとポケモンやアイカツなどのテレ東枠か長寿アニメの類ばかりでした。ここも大きく変動することはなさそうですね……。*1
深夜枠では2014年に3クールやってる弱虫ペダル(2017年にも2クール放送)や2016年に3クールやってるジョジョ4部などはありますが、基本的に深夜枠かつ3クール連続放送のアニメはほとんどなさそうです。分割で3クール以上放送されるアニメは少なくありませんが、連続で3クール以上となると、上記枠に食い込まなければなかなか難しそうですね。
気になったことなど
1クールのアニメが面白くなっている理由
冒頭で取り上げた「1クールのアニメが面白くなってきている」という部分については。1クールアニメの本数が増えており、その分面白いと感じる1クールアニメが増えてきたという印象が強いです。逆にそこそこの面白さの1クールアニメも相当数ある、ということです。再掲しますが、1クールアニメの増加数の顕著さは上記グラフよりわかります。
2010年以降特に顕著なのが、まずは1クールやってみて、ウケたりDVDやBDの売上がよかったら2期や劇場版をやるアニメが非常に多いというのが私の率直な印象です。例をあげだすとキリがないので、ここでは一言の所感のみに留めておきます。
オリジナルアニメの分布
オリジナルアニメであれば2期以上やっているアニメも少なくないし、面白いアニメも多いのではないかと思い、2007年から2016年の10年間のオリジナルアニメのクール数を確認してみたところ、上のような結果となりました。オリジナルアニメの本数自体もアニメ本数全体の傾きと類似しており、特に2012年以降に増大している傾向が見られました。2クール以上のものについては2007年から大きな変化はないと言えます(2クールアニメが2009~2012年にかけて少し減りましたが)
グラフから、オリジナルアニメだから2クール以上やるわけではない、と言えそうです。むしろオリジナルで分割クールだったり期を分けたりして放送されるアニメも少なくありません(これも例をあげだすとキリがないので割愛します)
データとは関係のない個人的な疑問ですが、2クールで放送されたオリジナルアニメが分割クールになった場合ここまで盛り上がっていたか(例:Tiger & Bunny)や、分割クールのアニメが2クール連続でやったらもう少し盛り上がっていたかを考えていたのですが、分割2クールだとFate/Zeroやらアイドルマスターシンデレラガールズなどとても盛り上がっていたコンテンツが分割クール放送されていたので、これ以上考えるのをやめました。面白いかどうかはクールの分割の有無はなく、ただコンテンツ次第ですよね。
ジャンプ系アニメでも3クール以上連続のものは少ない
少し本論から外れますが、調べていたときに気になったことがあったので。
僕のヒーローアカデミアの最終回を見ていた時に思ったのが、最近ってジャンプアニメでも1年ぶっ通しでやらず、クールを分割するアニメが増えたよなぁという率直な感想です。ここ最近だと黒子のバスケ、ハイキュー、食戟のソーマ、僕のヒーローアカデミアが該当します。
ジョジョは1部、2部でストーリーを分けることができるので除外ですが、トリコは日曜日枠で長期放送していましたし、NARUTOや銀魂も長期放送でした*2。べるぜバブですら5クール、SKET DANCEは6クールやってますし。何でSKET DANCEを6クール連続で出来てヒロアカは分割クールなんだよ……
最終回の最後に新シリーズの予告を入れてくれるのは嬉しいのですが、なかなか3クール以上連載してくれない、ましてやヒロアカ以外はそもそも深夜に枠を追いやられているというちょっと悲しい現状です。
とりあえずはこんなところで
他にも製作会社とアニメのクール数について調べようとしたのですが、これ以上書くとなかなか取っ散らかした感じになってしまうので今回は一度ここで区切ろうかと思います。この辺りを調べることで、アニメ製作会社の母体の大きさなどもちらちらと見えてくるものもありそうです。また、特に2クールもののオリジナルアニメを取り上げるのも面白そうですね。最近だとP.A.WORKSやTRIGGERでしょうか。
今回の結論としては1クールアニメが面白くなっているのは、そもそもアニメの本数が増えているためである、というちょっと乱暴な結論を述べておいて締めさせていただきますね。他の感想、結論が出たときに追記するようにしますね。