たかみめも

アニメ、ゲームの話や紅茶の話など、日々気になったことをだらだら書いてます

論文のAbstractだけで記事を作ると情報が足りないと感じた話

gizmodoさんの記事を読みました。タイトルだけ見るとすげぇと思ってしまったのですが、記事の詳細および参考にしている論文を読んでいるとちょっと引っかかる部分が出てきましたので、それに関連する話を少ししたいなと。

 

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対象の記事について

今回読んだ記事はこちら。gizmodoの記事とこの記事にて引用されている論文の話です。記事の内容は本当にこの記事タイトルの通りでした。このタイトルだけ見ていると、夢のある話のように感じますよね。私もそう感じました。

www.gizmodo.jp

 

文献:Durable Superhydrophobic Surfaces via Spontaneous Wrinkling of Teflon AF

 

テフロンはデュポン社の商標です。テフロンにも色々種類があるそうなので、この文献で使用されているテフロンAFもあわせて紹介しておきます。

テフロンAFグレードは金属やガラスに塗布できるフッ素コート樹脂です。フッ素コートは、よくフライパンに適用されているアレです。水をよく弾き、引っかき傷に強いという特徴を持っています。詳しい情報は下記サイトをご参照ください。

テフロン™AF グレード

 

記事に関してわからないこと

記事のタイトルを見て夢が広がるなぁと思っていたのですが、文献のAbstractを見てもなかなか欲しい情報が伝わってこなかったなぁというのが個人的な感想です。そう思った理由は以下の2点です。

 

作り方(の詳細)が単純に気になった

この文献の何がすごいかという話としては、テフロンAFをプラスチックに塗布して焼いたら定着しましたよという点。*1 Abstractを読んだ感じだと、「テフロンAFをスピンコートで薄く塗布した後に、ガラス変異点である160℃の温度で焼きなましを行うことでプラスチック上にテフロンを定着させている」と認識しているのですが、本当にその情報だけで間違いないのかという心配をしてしまいます。出来れば実験方法や結論を見たいですね。

 

素材の詳細が記載されていない

gizmodoには「縮むプラスチック」としか記載されていませんし、文献のAbstractには「two types of shrinkable plastic substrates(2種類の縮みやすいプラスチック素材)」としか記載がありませんでした。とは言え、プラスチックって色々な種類がありますし、種類によっては熱変性の仕方も大きく変わってきます。

そんなプラスチックの種類は以下の通り。多いわ。

f:id:nine-tail:20160323084425p:plain

(参考元:プラスチックの分類(基礎知識)|KDAのプラスチック加工技術)

 

Abstractだけだと情報が足りないから実験時の材料(Materials)を見たいなぁとひとりもやもやしていたら、これに見かねたつなぽんさんより論文の本文の一部を抜粋頂きました。ありがとうございます!

 

どうやら使われているのはポリオレフィン(製品: Cryovak D940)とポリスチレン(商品:Polyshrink)ということが判明。ポリオレフィンは以下引用の通りで、もともとはポリエチレンやポリプリピレンなどの素材を指すそうですが、今は以下のような素材も含むそうですね。

最先端の触媒やナノサイエンス技術の発展により,エチレンやプロピレンを一構成成分とする高機能性ポリマーやナノコンポジットのような高性能複合材料が出現してきており,本研究会では「ポリオレフィン」の意味を拡張して,このような次世代の先端材料技術議論にも適用して使っています.
例えば,低密度領域のコポリマー(エラストマーやプラストマー),エチレン/プロピレンを主体とするゴム,官能基を有するコポリマー,超高分子量ポリマー,長鎖・短鎖分岐 を有するポリマー,異種樹脂や無機成分を含有するナノコンポジットなども「ポリオレフィン」に含めています.

(参考元:日本ポリオレフィン総合研究会)

 

で、材質についてとやかく言っていた理由としては、(縮む)プラスチックって広義すぎて、どういう素材なのかという特徴を挙げていないにも関わらず、記事で以下のようなことを言っていること。

この素材、縮むプラスチック素材でできていることからも、形を変えるのも非常に簡単。車からカバンから、非常に色んな用途に使える可能性があるとのことです。

 

縮むプラスチックって色々あります。ざっくりした情報だけで夢を広がるようなことを大規模メディアが言うことに、軽い恐怖を感じました。

 

論文のAbstractだけでは情報が足りない

上記の話から、論文のAbstractだけではやっぱり情報が足りないなと感じました。恐らくgizmodoの情報も論文の本文を参照しているわけではないと思っています(日本サイトは英gizmodoのサイトを和訳したものですが、英gizmodoのサイトの情報もほぼ一緒でした)

 

Abstractなどの概要の情報は、記事の情報を短時間でざっくり掴むにはとてもいいものですが、詳細の情報を正しく掴もうと思うと、やはり本文まで読まなければ伝わらないこともよくあります。

こういう記事を掲載するのはとてもいいことだと思います。ただしAbstractだけでは詳細の情報量が足りないんじゃないかな。大手情報サイトなので、本文まで見て記事の内容を精査してほしかったなぁと感じました。

*1:そもそもテフロンの接触角が180°近いため、すごく撥水するというのは既知の事実